2017/05/19 茶沢通りの「移動式街路樹」にまつわる話
茶沢通りの「移動式街路樹」にまつわる話
来週末に馬事公苑で開催予定のガーデニグフェアをきっかけにして、三軒茶屋と下北沢を一直線に結ぶ茶沢通り商店街に植物を植えていく計画を目下進行中である。
茶沢通りにはすでに都市計画の一環として植樹された樹木があるが、花をつけることもなく生い茂ることもない、誠に日本の近代都市計画のニュアンスを反映した人工的な様相を醸している。
地元の人々はこれをナントカしたいという気持ちはあるが、日本の法規とそれを管轄する行政の仕組みが事を容易にはさせないという現実がある。
最初はガーデニングフェアで展示された後に廃棄されてしまう予定の植物を転用して移植すれば、ほぼその植物代はタダなわけだし、街路も色鮮やかになって、行政には美味いことしないと思い、簡単に許可が下りるであろうとタカをくくってもいた。
ところがである。商店会長と行政との交渉の想定問答をしていた中でこんなやり取りがあった。
「メンテナンスはどうするんでしょうか?水やりとか、色々と、、、」
「それは、商店街組合に加盟している街路沿いのお店のオーナーがそれぞれ自分の目の前の樹木
の水やりをやってくださることで、解決可能でしょう。」
「では、新しく樹木の足元に植え込みを植えることで、それに子供がつまづいて車に跳ねられたら
誰が責任をとるのでしょうか?」
「それは親の責任でしょう。」
「、、、、、、。」
という具合に、今の時代は親の責任で街路樹を植えられるほど甘い世の中ではないのでした。
それでは、ということで
「では、街路樹が動いてしまえばいいんですよね。普段はどこか別のところにいて、イベントとか
歩行者天国のときだけ街路に出て来れば、子供も車に轢かれないでしょ。」
それは名案だ!、とのことでこの移動式街路樹という世界でも聞いたことのない矛盾した名前を持つ
ものを作ってみることになりました。
その試作第1号が来週には完成して、お披露目となります。
それから、移動式街路樹の発想には、実は元ネタがあります。それはかの宮沢賢治が考えて絵まで
残している「動く電信柱」です。
私の研究室では、都市と建築を互いに横断可能な「インフラアーキテクチュア」という概念の実践も行っています。一連の三軒茶屋での私たちの活動は実は、いまやこの地域では古典的となった「まちづくり」(太子堂地域はその発祥地とされる)を「インフラアーキテクチュア」にリノベーションする実践的実験です。
具体的にはこの茶沢通りという一本の真っ直ぐなインフラ道路を様々なデザインを使って内部空間化して
いくことです。
「動く電信柱」というインフラそのものが動いてしまう賢治のヴィジョンは、その走りであったと思います。
「移動式街路樹」は街路樹という動かないインフラを動かしてしまう計画なのです。
2017年5月19日 渡邊大志