2016/07/11 246のキトラ計画
東京の大動脈である国道246号に面して古来の四神のうちの白虎を祀る計画である。
敷地は地域の神社でありながら神楽殿などの古来の神道の諸儀式の場とそれを囲む森が残されつつ、
現在までよく手入れが行き届いている境内の隣地にある。
国道に対して角地にありながら、最も不動産的な価値が高いと目される空間は空地として保存されている。
この計画は、その空地と都市の大インフラに面して守り神となるような白虎を左官、書画ほかで描くことで
神社と一体となった風景を生み出そうと考えたものである。
そもそもの話しの始まりは、この白虎を描こうとした既存建物の1階におけるレストランBARの改修に端を発している。
オーナーはこの場所で15年以上営まれてきたこの店を前オーナーから譲り受け、店の名前も譲り受けて新たにオープンするつもりである。
以前は国道を挟んだ対岸で小さなレストランを営んできたが、本格的にこの地域に根付いて商売をしていくために神社の隣地に次の段階の舞台を求めたのであった。
オーナーの要求は二つ。「寅」というお店の名前を引き継ぐことを表現すること。そして、漢字や書画といったカリグラフィーによってそれを表現することである。
それに加えて、神社の氏子制度は現在に残る日本的コミュニティーの代表的なものである。それがよく保存された神社の隣地にあって、お店の設えも、そしてそのお客さんも含めて神社を支える地元の盟主たちと協栄していこうとするオーナーの考えそのものを表現したいと思った。
白虎は中国大陸から朝鮮半島を経て日本に伝わった四神のうち西方を守る霊獣とされる。
明日香村のキトラ古墳にはその姿がよく残されている。
現在の皇居に対して西方に当たる神社境内地の隣地にあって、代表的な近代インフラである国道246号線に左官ほかで作った白虎を対峙させるのもよいのではないか。
2016年7月12日
渡邊大志